はじめての輸出を成功させよう! 輸出の流れを徹底解説
複雑怪奇な輸出の流れを、20分でわかるように解説します。
輸出は、複雑に見えますが実際にはとてもロジカルで合理的な構成です。
一つ一つ理解していけば、だれでもどのような流れで製品を輸出すればいいのかわかるようになります。
輸出は大きくわけると7つのステップで成り立っています。
一つ一つのステップをしっかり押さえて、輸出の全体像を理解しましょう。
中小企業が製品を輸出するメリット
そもそも、製品を輸出するメリットは何でしょうか?
それは、海外の市場にアクセスできるということ。
貿易は大企業しかできないと思われていますが、実は中小企業でも可能です。
輸出の流れ
1.事前調査
本当に輸出にとりくむべきか?
本当に輸出できるのか?
まずは、この二点を検討するための情報収集です。
輸出先を選定し、契約を結んでから実は輸出できないことがわかったら目も当てられません。
輸出を本格的にスタートさせるまでに、必ず下調べをしましょう。
市場調査
「自社の製品が本当に売れるのか?」
この疑問を解消するために、海外市場を調査します。
調査の方法は、ジェトロ、大使館の商務部、付き合いのある商社に頼む、などの方法があります。
ニーズを見極めるために、製品の特徴を洗い出し、ターゲットとなる海外市場を入念にチェックします。
調査を進めながら、販売先も見つけます。
ジェトロのTTPP、展示会などを利用しましょう。
各種規制の調査
輸出には輸出先国の規制に加えて、輸出元国の規制、国際輸送に関する規制が関わってきます。
まずは、輸出先国の規制を調査しましょう。
国によっては特定産品の輸入が禁止されていたり、特別な許可が必要な場合があります。このような規制を見落としていると、あとで大きなトラブルになることがあります。
つぎに、輸出元国(この場合は日本)の規制も要チェックです。
日本には輸出貿易管理令、ワシントン条約などがあり、輸出できる産品を規制しています。
これらの規制を見落としていると最悪の場合逮捕されることもあります。
最後に国際輸送に関する規制を調べましょう。
輸送上の問題で輸出が難しい場合があるので注意しましょう。国際輸送の専門家、フォワーダーに尋ねるのが最も確実です。
2.契約
取引先が見つかれば、互いの希望条件をうやり取りして交渉を行いましょう。合意すれば、売買契約を交わします。
契約においては、商品価格、決済通貨、決済方法、決済の時期(Payment Terms)、品質、梱包条件、輸送方法、引渡し時期など様々な条件を取り決める必要があります。
また、貿易条件(インコタームズ)もこのときに定めます。
国際貿易においては英文契約書を作成するのが一般的です。双方サインしたものを一部ずつ保管しましょう。
決済方法について
貿易では、どのように決済するかが重要です。
決済方法には以下の2パターンがあります。
電信送金決済
電信送金とは、銀行口座に送金してもらう方法です、国内で行う取引の決済でもよく使う方法です。もっとも簡単な方法ですが、輸出者が商品を出荷したのに輸入者が代金を払ってくれないというリスクがあります。そのため、はじめての取引相手や信用できない相手には推奨できない決済方法です。
荷為替手形決済
荷為替手形決済とは、輸出者が荷為替手形を作成・発行し、輸入者は書類と引き換えてに代金を支払う決済方法です。荷為替手形は、為替手形と船積み書類からなります。荷為替手形を用いた方法では、輸出者は船積み後、荷為替手形を銀行に買い取ってもらい、輸入者は書類と引き換えに商品代金を支払います。そのため、輸出者からみると、商品出荷直後に銀行から入金することになり、商品を出荷したのに代金を払ってもらえないという事態を避けることができます。
荷為替手形決済は大きく分けて、信用状付荷為替手形決済と信用状なし荷為替手形決済があります。
・信用状付荷為替手形決済(L/C決済)
信用状付荷為替手形決済(L/C決済)は、輸入する側の取引銀行が輸出者に対して支払いを保証する決済方法のことで、輸出者から見るともっとも代金支払いの信頼が高い方法です。
売買契約を交わしたあと、輸入者は取引銀行に信用状(L/C:Letter of Credit)を開設してもらいます。輸出者はL/C入手後、その指示に沿って輸出を行います。輸出者がL/Cを含む荷為替手形を銀行に提出することで、L/C開設銀行(通常は輸入者の取引銀行)が輸入者に代わって支払いを行います。
代金支払いを輸入者の取引銀行が確約する決済方法なので、最も商品代金を回収しやすい方法ですが、輸出者はL/Cの記載通りに輸出を行わなければいけないので面倒な方法でもあります。
・信用状なし荷為替手形決済(D/P決済、D/A決済)
輸出者が銀行を通して荷為替手形を輸入者に送るのは同様ですが、D/A, D/P決済の場合は銀行が支払いを保証しません。その分、L/Cの通りに輸出する必要はなく、簡便な方法です。
D/A決済では、輸入者は為替手形の期限内に支払いを行う必要があり、D/P決済の場合は書類受取と同時に代金を支払う必要があります。
3. 輸送ルートの検討と船積み手段の確保
契約を結んだあとは、実際に輸出するための準備をしていきます。
まず考えなければいけないのは、相手国までどのように運ぶかということ。
日本は島国なので、相手国までの輸送には航空便と船便があります。
一般的に、航空便は割高ですが到着までの期間が短く、小さなかさばらない品目の輸送に向きます。
船便の場合は逆に大きくてかさばる品が向いています。
国際輸送は、法令や規制によって輸送できる手段が決まっていることもあるので、事前によく調べておきましょう。
このとき、同時にフォワーダー(乙仲)に通関業務を依頼します。
フォワーダーとは通関に必要な手続きの他、本船のブッキングなどをしてくれる会社のことです。会社によって相手国、輸送手段の得意不得意があるので、事前に調べて適切な相手に依頼しましょう。
依頼の際は、品目、数量及び重量、梱包条件、出荷予定日(フォワーダーの倉庫への到着予定日)、到着希望日を連絡します。
そうするとフォワーダーが条件に合う本船(貨物を積載する船舶)をさがしてくれるので、ETD(出港予定日)、 CUT日(貨物や必要書類を用意しなければならない期限)を聞いておきましょう。
状況次第では、船舶の数が足りなくなったり、スケジュールが乱れたりしてブッキング希望が殺到し、希望の本船を押さえられないことも考えられます。輸入者と契約を結んだらすぐにフォワーダーへ連絡し、時間に余裕を持って探してもらうようにしましょう。
また、指定された日に貨物をフォワーダーの倉庫へ搬入します。
その際、輸送規制に従って、通常の梱包から輸出梱包に梱包し直さなければならない場合があります。
梱包条件は輸送規制や顧客との契約によって決まっているので、フォワーダーと相談しましょう。
4.信用状(L/C)の入手と確認(L/C付き取引のみ)
信用状のある取引の場合は、信用状を入手する必要があります。
輸入者側が取引銀行で信用状を開設すると、日本の通知銀行が信用状を送付してきます。
信用状は通常英語で記載されています。
信用状を入手したらすぐに内容を確認しましょう。
なぜなら、信用状付きの決済を使用する貿易では、信用状の文言と一語でも異なっていたら受取が拒否されることがあるからです。
これをディスクレパンシー(ディスクレ)と呼びます。信用状付き決済では、信用状を開設した銀行が支払いを建て替えることになります。そのため、銀行の発行した信用状とこちらの用意する書類が完全に一致していることが支払いを受ける条件となるのです。
信用状をチェックする際は、日付やスペルにいたるまで丁寧に確認し、万が一契約との相違やスペルミスがあった場合は輸入者にアメンド(条件変更)を依頼しましょう。
5.輸出通関
フォワーダーに指定されたCUT日の約一週間前から通関書類の準備を始めます。
通関書類は、通常インボイス、パッキングリスト、船積依頼書(シッピングインストラクション)から成ります。
これらの書類を期日までにフォワーダーに送付し、通関手続きを進めてもらいます。
フォワーダーは通関手続きと同時に、貨物をコンテナヤード(CY)に搬入し、船積みの準備を整えてくれます。
輸出許可がおりると、輸出許可書とB/Lドラフトを送ってくれるので、内容を確認しましょう。
とくに、BLドラフトは船積依頼書をもとに作成される書類で、このドラフトの記載内容がそのままB/L(船荷証券:Bill of Lading)となりますので、よく確認しましょう。
6.B/Lの入手
出港予定日(ETD)を過ぎたら、フォワーダーがB/L(船荷証券)を送ってくれます。
このB/Lは事前に送った船積依頼書(シッピングインストラクション)通りに作られているはずなので、問題ないことを確認したら、インボイス、パッキングリスト、B/L、保険証券などを揃えて輸入者に送付します。
7.代金の回収
代金を回収するタイミングは、前払い、後払い、L/C付き決済、L/Cなし決済など様々です。
このとき、L/C付き決済とL/Cなし決済(D/A, D/P決済)の場合は書類を銀行に買い取ってもらう必要があります。
信用状を利用している場合は信用状に必要書類が記載されているので、それを揃えて買取依頼書を作成、銀行に買い取ってもらいます。
書類を買い取ってもらい、代金を回収したら輸出の流れは完了です。